国のはじまり

 日本アドラー心理学会の問題については、ちゃんとした資料が手に入っていないので、断定的なことはなにも言えない。だからしばらくは黙ることにする。

 かわりに日本国の歴史について書いてみる。竹田恒泰氏が書かれた『中学歴史』という本を手に入れた。本文の書き出しは32ページじゃないかな。「日本列島の誕生」という題名で、次のような記事が書かれている。

  この世の初めに高天原に成った神は、天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ)でした。しかし、この神はすぐに姿をお隠しになりました。その後、まもなく高御産巣日神(たかみむすびのかみ)と神産巣日神(かみむすびのかみ)が成りましたが、同じようにすぐに姿をお隠しになりました。

  (中略)その後、国之常立神(くにのとこたちのかみ)と豊雲野神(とよくもののかみ)が成り、姿をお隠しになりました。そして次に初めて男神(おがみ)と女神(めがみ)が成ります。宇比地邇神(うひじにのかみ)と妻の須比智邇神(すひぢにのかみ)を始め、五対の神が成りました。そのうち、最後に成ったのが伊弉那技神(いざなぎのかみ)と妻の伊弉那美神(いざなみのかみ)です。

 これが日本国の創世記だ。なんだかわけのわかわらない泥沼のような土地に次々と神々が生まれては消えてゆく。やがて男女の神ができて、はじめて神と神のあいだの子供が作られる。そうして神々の系譜がはじまる。やがて伊弉那技神の子孫は「たかまがはら」とよばれる天上世界を去って、地上に下って日本国を作られる。

 まあ、訳のわからん話だといえばまったくそのとおりなのだが、『中学歴史』という本は公的な中学校の歴史教科書をめざして書かれているので、「神々の側」の歴史とは独立に「人間の側」の歴史も書かれていて、その両者が微妙にぶつかりあうところに味がある。私を含めた多くの読者は、皇室の子孫ではなくて人間の子孫だから、勝手に「人間の側」に立ってこの本を読む。