惊奇日本

 インターネットに「海外の留学生」が「日本で食べ歩き」をするサイトがある。大阪近辺だと「惊奇日本(りょうきにほん)」という中国語のサイトが有名なんじゃないかな。出演者は日本在留あるいは留学中の中国人もしくは台湾人で、一人あるいは二人で出かけて、大阪市内の食堂(中華食堂が圧倒的に多い気がする)で食事をする。それだけの内容だが、見ていてなんだかおかしい。

 「中国にはない超お洒落な中華料理店」だの「ご飯食べ放題の『象印食堂』」だの「中国人留学生がおススメの大阪絶品ラーメン」だのという題名で、なんだかおいしそうなメニューが紹介され、出演者がそれを食べて感想を言う。なかなかうまそうではある。もっとも、中国人や台湾人が驚いているのであって、純日本人であるわれわれが同じものを食べて同じだけ驚くかどうかは、保証の限りではない。

 「天津飯」だの「天津甘栗」だのが日本製で中国には存在しないことだとか、「中華丼」などといっても中国のものと日本のものとはかなり味わいが違っていることだとか、あれこれ「トリヴィアル」な知識がたまってくる。いままで台湾や香港に行った経歴から考えても、向こうで「中華料理」を食べられた経験があまりない。はじめからそんなことだろうと思って行ったので、別に驚きもしなかったが。とにかく「日本の中華料理は日本の中華料理」なんだ。日本でも中国でもないところ、たとえばパラオ諸島とかスペインとかでは、日本の中華料理とも中国の中華料理とも違うものを食べさせられたしね。

 そうして「方言化」していって、いつかもとに戻るかというと、そうでもないようだ。そもそも中国本土で料理にさまざまにヴァリエーションがあるのは、長年の歴史のなかでできあがってきたことなんだしね。それが世界全体にひろがって、むかしに戻ることなど考えないで、「ご当地風」の中華料理を開発し継続していくんだろう。そういう流れの一部として「惊奇日本」があるわけだ。